2023/12/11月

・宇宙船自宅号

軽のキャンピングカーで馬券生活する人の話をした。どうして彼らにあこがれるんだろう?と夜散歩の間に考えていた。サラリーマンをしないでなんとか食っていく自由度? 違う。家が移動するところだ。

おうち大好きで、ちょっとの外出でもすぐ家に帰りたくなる。そういうひきこもり体質の人間にとって、自室がそのまま移動しているキャンピングカーは、魔法の乗り物だ。幼少期よく寝ながら天井を見つめて「ああこのままこの家が宇宙船になっていろんなところに行けたらなあ」と夢想した。木枠の窓ガラスに星々が流れるところを想像した。ウサギ小屋のような狭小団地に住んでいたので、なおのこと軽自動車の荷台につくられた閉鎖的な小スペースに心地よさを感じる。軽キャンピングカーの実際のレビュー動画を見ると、高速では80-85km/hが限界とか言ってて、排気量の大きい車のほうがいいのでは? とかつまらない現実的な問題に逢着する。

手に入るまでは「いいよな〜いいよな〜」と思っているものがいざ自分のものになるとマジックが消えてしまうのはなぜだろう。1000ccのバイクが欲しい!と憧れて、大型バイクの免許まで取りにいって、やっと手に入れたのに、いざ駐輪場にバイクがあると、それまで想像した「あんなことしたい」「どこそこへ行きたい」とかいう計画は実行されず、毎月の保険料とかガソリン代で、ただの鉄のかたまりというか、文字通り重荷になって売ってしまった。手放すと、いい思い出ばかりがよみがえって、また欲しくなる。夏場に股ぐらにヒーターを挟んだような状態で渋滞にハマる地獄のことはさっぱり忘れてしまっている。

 

・みんな俺のこと好きワールド

いつ頃からか人と接するのが苦手になっていた。自意識の芽生え、なんて言えば格好いいが、そんなもんじゃない。あるときまで「みんな自分を好いてくれる」「みんな自分に好意的だ」って意識ベースで生きていたが、たびたび認めがたい反例にでくわして挫折したのだ。これが反転すると厄介だ。「みんな自分のことが嫌い」「人はみな自分をハメようとしている」なんて、病的な妄想にとりつかれるようになる。

幼少期にイジメに遭った人は、きっと似たような構え方をするのではないか? 「自分は人に嫌われる」ベースになる。その態度が、人に嫌われるような言動の源となって、妄想が自己成就してしまう。容姿に悩む人もそうだ。「自分はブスだと思われる」「人から悪く見られる」がベースになって、卑屈になり周囲の塩対応を引き出してしまう。昔よくNHKの受信料徴収スタッフが家にきた。そこで思ったのは、みな嫌われ慣れしすぎていて、その様子がまた嫌悪感を与えるということだった。

「みんな俺のこと嫌い」は妄想だ。実際はただただ圧倒的な無関心があるだけだ。同じ妄想世界なら「みんな俺のこと好きワールド」に生きたほうがいい。少なくとも好意的に受け止めてくれるのでは? みんな自分のことを助けてくれるのでは? って構えで生きているほうが楽だし、幸せだ。